玉座に座っていたのは金の髪をなびかせた、若き国王陛下。

いきなりの謁見だと言うのに、気分も悪くせず快く迎えてくれた。



「反抗期は終わったのか?スパーダよ」



「うるせーな。そんなんじゃねーっつの」






相手が国王陛下だと言うのに、いつもとなんら変わりない態度のスパーダにリフィルが教育的指導。

「こら!言葉遣いがなってなくてよ」

「いってー!」






「はっはっはっは!いやいや、気にするな。お前たちも楽にしていい

 俺はピオニー・ウパラ・ヴィノセ\世。このヴィノセを治める国王だ」




以前出会った、エヴァのウッドロウやレディアのアガーテと違う王族としては珍しいタイプ。
はどうしたらいいかわからなかった。





「おう、書状を持ってきてるんだろ?」
「あ、はい!これです!」


の側に、側近が近づき書状を受け取った。
それが、ピオニーの手に渡る。






書状を広げ、読んでいく。
そして読み終わると、ピオニーはをまっすぐ見つめた。









「お前は何故、ここにいる?」

































―――エヴァ―――




「というわけで、貴方にこの任務についていただきます」

「私が…ですか?しかしそれならマグナス隊長の方がよろしいのでは?」

「彼は別件で出ていただきますからね。それに、貴方には弟君がおられるでしょう?」

「…はあ。しかし弟は他国の」

「だから、いいんですよ」





エヴァ、ホーリークレスト軍第三小隊隊長を務める男アスベル・ラント。
ジェイドに呼ばれ、出向いた執務室である命令を出されていた。





“――アスベル・ラント。貴殿に、シュ・リンカ樹林の調査を命じる”




「シュ・リンカ樹林はエヴァが統治するリヴェイル大陸とヴィノセが統治するクリミア大陸の境にある場所―――正式な許可をとっている時間が今は無いんです。
 
 貴方の名を出せば、弟君が出てこられるでしょうから話が幾分か通りやすいのではないかと」

「成程…」

「すみませんね。何分今割ける人員が無いもので」

「わかりました。不肖アスベル・ラント。謹んでこの任務お受けいたします」




























「どういう…意味ですか?」

ピオニーの質問の意味がわからない、と言った顔の



「そうか、じゃあ質問を変えよう。何のために旅をする?」

ピオニーが指を弾いた瞬間、兵が達を取り囲む。




「!!」


「な、何?!」





「さあ、答えろ“ディセンダー”」




ピオニーの一言で今にも飛び掛ってきそうな兵士達。
徐々に間合いを詰めてくる。




「そういう意味での質問か…」



こんな状況でもは凛と立っている。












「オレは―――」































「ジェイドちゃん、なんで青年に行かせたわけ?」

「ちゃん付けするなと、言ったでしょう?」

「まあまあ。…で、どういうわけ?――――あれは俺が行く任務だったはずだろ?」

「早急にヴィノセとの連携を取らなくてはならないんですよ。念には念を、というやつです」

「ふーん。まあ良いけど。あんな、異変だらけのとこ行きたくなかったしぃ〜」



























「この目で世界を見る為だ。自分の目で見て、耳で聞いて、世界を知るために」

「――見たくないものが見えるかもしれんぞ?」


鋭い目がを見据える。
先程までの人物とはまる別人のようだ。

だが、も視線を逸らさない。



「それが、オレのやるべき事だから。全てありのまま受け止める。でなければ真実は見えない」








スッとピオニーの右手が上げられる。

達を取り囲んでいた兵士達が引いていった。






「…これは」

「合格…かしら?」










「すまんな。本心を聞きたかったんだ。“救世主”と呼ばれているディセンダーがどんな風にこの世界を感じているのか」






「ではは…」

「ああ、文句無しだ。ジェイドからの書状通り、“純真無垢な子どものようだがとても広い目で世界を見ている”な」




力が抜けたようにスパーダとガイは肩をすくめた。
は首を傾げる。





「では、。ひとつお前に依頼をしよう」





ピオニーが手を叩くと臣下の一人が地図をに手渡した。
開いてみるとある一点に×マークが付いている。



「そこはシュ・リンカ樹林と言ってな。普段あまり人が立ち寄るような場所じゃないんだが…最近妙な目撃証言が入ってな。

 なんでも、気分が悪くなったり不思議な声を聞いたりするらしい。中には女の霊を見たとも言われている」

「…それはまた」
「なんとも不気味な話だな」



リフィルとガイは冷静にコメントする。




「ま、行ってみりゃわかんだろ」

「そだね。そのシュ・リンカ樹林の異変を調査してくれば良いんだね?」


「ああ、頼む。ただあそこはクリミア大陸とリヴェイル大陸の堺だからな。一応ウチの方から一人連れていってくれ。何か揉め事が起きても困る」






ピオニーが手を叩くと、一人の青年兵士が入ってきた。
年は若い、しかし来ている軍服が他の兵と違うと言うことは位が上なのだろう。
ヴィノセ国王直属のヘルフレア軍の紋章が入った青い軍服に身を包んだ彼の地位は―――少佐。







「よく来た、オズウェル少佐」
「お呼びですか、陛下」
「早速だが、お前に頼みたいことがある。ここにいる者達と共にシュ・リンカ樹林の調査へ行ってくれ」
「この者…?…!スパーダ!!!」



「うげっ。少佐って…おめー…俺のいない間に出世したなあ、ヒューバート」